HOME / 同窓会 / リンク / 改訂記録

(2000.3/20作成)
大きな写真になります



二高校地の生物的自然
 −虫たちの四十年−
高2回 小野 泰正
 都市化現象の著しい仙台周辺地域では、現在、丘陵地の自然が急速に失われている。
この趨勢の中でみるとき、旧市街地をやや囲む形で残された青葉山、霊屋、大年寺山
や、日本の名水百選の一つに選定された広瀬川は、誠に貴重な”緑である。
 二高の校地は、この青葉山と広瀬川の間に存在する。そして校内には今なお緑の樹
々があり、西道路建設で影響を受けた蔵王池も復元した。親の代からこの川内に住み、
校地の隣で生れ育ち居住する生態学専攻の私には、この校地は生物の原体験の場でも
あった。
 東北大学名誉教授の加藤多喜雄、陸奥雄両先生は、子どもの頃から仙台市内にはア
ゲハチョウ類が多かったと述懐されるが、これはかって市内にはカラタチの生垣が多
かったことによる。二高の敷地も、金網フェンスに変わる前はこの生垣で囲まれ、白
秋の詩の風景があり、アゲハ類が発生した。
 現在、市街地ではアゲハ類は激減した。私は二十一世紀の仙台市を考える或る懇談
会で、アゲハの飛ぶアメニティタウンなどの構想を話題にしたが、菅野邦夫野草園長
はカラタチの刺は災害時の避難の障害ではと言い、個人住宅の敷地の小規模化なども
考えれば、アゲハの復活はサンショウの樹のみではもはや困難であろう。
 さて昭和二十六年の事であるが、当時の一東北大生が初めてスジグロチャバネセセ
リという蝶の食草を解明した。これは亀井文蔵氏と共編著の「宮城県の蝶」に収録し
たが、実はその場所は二高の生垣と土手であった。
 二高の前庭には、ヤナギ類が多く、美しいコムラサキやゴマダラチョウ、クワガタ
ムシ類などがその樹液に集った。このヤナギは、天皇の御学友として知られる植物分
類学の木村有香東北大学名誉教授の植栽によるものである。現在は数本が支柱に支え
られてあるが、残念ながら樹液に集まる昆虫類はみられない。しかし本年七月、ゼフィ
ルス(西風)と総称される、小形の美しい蝶の一種のミドリシジミが発生しているの
には一驚した。食樹のハンノキ類は、少数が残っている。
 また、復元した蔵王池には、またまた驚いた事に、腹部の付け根が黄色のコシアキ
トンボ、腹部が目盛に似たモノサシトンボ、小さなクロイトトンボが棲息し、コシア
キトンボは縄張りをパトロールしたり、鎮魂の像のあたりを飛翔するのが観察された。
もっとも、かっては大手門下の五色沼などは、優れたトンボ類の棲息地ではあった。
 自然には復元力があり、人為でも環境の創出に配慮すれば、例えばこのように飛翔
能力のある昆虫類は棲みついて、繁殖するという生命の力をみせてくれるのである。
ご感想の掲示板です。(BBS)
メールの場合はkikuta@sm.rim.or.jp

[ 同窓会に戻る / 仙台二中・二高北陵会に戻る ]