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(2000.3/19作成)
大きな写真になります



忘れ物
高1回 高橋 敬
 降ったり止んだり、今日も梅雨の空の日曜日。こんな季節でも私はなるべく傘を持
たずに出掛ける。戦中はだから少々の雨は平気だし、休日には大抵、カメラを持って
出るので傘は撮影に邪魔なこともあるが、一番の理由は傘を忘れて帰る事が多いから
である。
 自分にとって雨が上がっているのに傘の事を覚えている人を不思議に思う。
 世の中には、忘れっぽい自分でも驚く様な忘れ物による悲喜劇も多いので、この予
防について、私なりの苦心を恥をしのんで述べるのも誰かの御役に立つかも知れぬ。
 忘れ物をしやすい性質はかなり遺伝的なものもあるらしく、私の父は旅行をすると
必ずと言ってよいほど、傘、帽子、眼鏡等々を忘れて来ていた。私も小学校や二中在
学中の事で、今でも覚えている失敗もあるが、折角仕上げた宿題を家に忘れて学校近
くから取りに帰り、結局、遅刻してしまった時など情けなかった。
 会社関係でも役職の上下と関係なく、私と同類の人が結構多い。ニューヨーク駐在
中には、来訪者が忘れ物をせぬ様に注意をし気を配る事が大切な仕事の一つでもあっ
たが、ついうっかりで土産物、カメラ、コート等々を紛失した方々も多かった。海外
旅行中は特に神経を使うし、時差ボケもあって盗難の危険もあり、特に注意と対策が
必要だろう。
大体にして忘れ物をしやすい人は、良く言えば、精神の集中力があり、ある行動、思
索、話題に没頭し過ぎて他の事はすっかり頭から離れてしまう。旅行中に同行者と話
題に熱中すると特に危ない。私の失敗の大半はこれである。
 さて、予防法は何も持たずに出掛けるのが一番だが、これは無理だから、私は日頃
次の対策に心掛けている。
一.手帳・印鑑・財布等の入っている上衣は少々暑くても脱がず、大事な書類もなる
 べく内ポケットに入れ身から離さない。
二.書類カバンは必要あろうが無かろうが必ず持って歩き、手にカバンを持たぬと通
 常の感じがしない。
三.荷物の数は二つ以上にしない。特に海外旅行中は中型トランクと書類カバンだけ
 とし、カメラ、傘、土産物等はすべて小型軽量な物にしてどちらかに押込む。
四.持物は出来る限り身近に置き、手足が触れている様に心掛ける。車中では網棚に
は上げず、膝の上か両足の間におく。
 さて、私自身、これ等を確実に実行出来れば汚名を返上出来るのだが、先日も傘を
忘れ、しかも何処で失くしたのか思い出せぬのだから困ったものだ。何んとか大切な
もの、特に金で買い直しの出来ぬものは失くさぬ様に気をつけよう。傘ぐらいはあま
り気にすまい。
 とにかく、つゆ明けを心待ちす此頃である。
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