仙台二高創立百周年誠におめでとうございます。この百年の間、母校は幾多の
逸材を世に送り出して参りました。このことについては諸君がこれから手に
する「仙台二中二高百年史」にも明らかなところであります。そしてまた
今後も母校は幾多の逸材を輩出してゆくことでありましょうし、諸君らも
その一員になるであろうと私は確信しています。
さて、この機会に私は諸君等に次のことをお願いしたいと思います。それは
「懐の深い本物の人間たれ」ということです。機会ある毎に私は話してきたよう
に樹木の例で言えば、桧・ヒバ・杉を目指していただきたい。いくら一時的に
役に立つからといって軟木のヘナヘナのラワン材では困るのです。それでは
すぐ底が知れて使い物にならなくなります。やはり四季をしっかり踏みしめて
育った木曾の檜、秋田の杉のような人間を目指していただきたい。
世界に大きく羽ばたく人間は一時的な利益や目先のことにとらわれない本質を
見る目を持った懐の深い人間でなければなりません。そのためには井上靖の
「あすなろ物語」の主人公のようにいつかは本物の檜になろうとたゆまぬ努力を
積み重ねていただきたい。そしてそれとともに深い教養を積み重ね、バランスの
とれた人間であっていただきたい。
いくらIT社会になりつつあるといっても所詮それらを動かすのは人間なので
す。本物の人間は人間らしい人間でもあります。今後二十一世紀に活躍する
諸君等が人間らしい心を持った懐の深い一流の人間になることを期待するととも
に、母校仙台二高が更なる発展を遂げることを祈念してここに筆を擱かせて
いただきます。
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